カルヴィーノ全レビュー中間報告

ほとんど自分用。評価もなんとなくで、ツッコミ待ち。

◆ごくざっくりした概観
・初期(ネオ・レアリズモ)
・中期(〈われらの祖先〉三部作)
・後期(レ・コスミコミケからパロマーまで)
と分けたときに、初期とそれ以降はリアリズム文学と非リアリズム文学、後期とそれ以前は語り手の制約からの脱却志向の有無という感じに差異を指摘できる。
 〈われらの祖先〉トリロジーでは、最後の『不在の騎士』にだけ語り手についての大仕掛けがある。Qfwfqの発明は、後期の性向を顕著に示すものだ。風刺についてカルヴィーノが書いていることもあるけれど、〈われらの祖先〉トリロジーでも、寓意は単なる教訓に留まらないところまで高められている。モチーフと含意の間に高度な緊張関係がある。  
 こうして読んでみると、不在の騎士や木のぼり男爵の結末はまるで続く後期の作品への次回予告のようにも見える。

◆主要作品
『まっぷたつの子爵』★★★☆☆
 トリロジーの第一作。かなり寓話らしい寓話で、語り手は主人公の甥。分断と二元論。世界を語ろうとする性向。分析的に見せない分析(?)
 正史との関わりは冒頭だけ。

『木のぼり男爵』★★★★☆
 トリロジーの第二作、トリロジー中で最も新しい時代を扱った、最も長い作品。要素も多く、フランス革命ナポレオン戦争フリーメイソン、スペインの政争など、正史との関わりも多い。政治性も強いと思う。
 語り手は主人公の弟。成長から死までをきちんと追っているのもかなり珍しい。

『不在の騎士』★★★☆☆
 トリロジーの最終作。狂乱のオルランドの影響下にある。
 舞台の中心がイタリアにない。語り手は修道女 = 女騎士。前2作に比べて場面転換が激しくなり、省略が増える。民話収集で得たヒントを実地で試した?

レ・コスミコミケ』★★★☆☆
 Qfwfqの発明が行われる。科学がもたらした知見をイメージソースとした認識の自由運動。

『柔らかい月』★★★☆☆
 Qfwfqの続き。より抽象的かつ晦渋になり、いつしか語り手は消失する。車と高速道路が頻出し、ティ・コン・ゼロでは危機に陥った人間の、右往左往する思索が描かれる。その姿は世界という困難に挑もうとする作者と相同である。「モンテ・クリスト伯」において、カルヴィーノはひとつの作業仮説を提出するに至る。

『見えない都市』★★★☆☆
 再読の必要あり。都市を使って遊び倒すが、それだけではない。

『宿命の交わる城』★★☆☆☆
 タロットを使った物語の基本原理探求。ランダムネスの導入。古い素材への回帰でもある。
 試みは成功したとは言えない。

『冬の夜ひとりの旅人が』★★★★★
 完全な小説の試み。再読の必要あり。

パロマー』★★★★☆
 ティ・コン・ゼロの焼き直し、だがより明朗で軽い。訳の問題もあるだろうが、不必要なわかりにくさというものが排されている。語り手は死を迎える。

◆おまけ
『マルコヴァルドさんの四季』★★★★☆
 文明批判も含みつつ、ユーモラスに残酷に下層を描く。そしてふっと幻想に飛躍する。都市生活の重みが取り除かれる瞬間がある。

『むずかしい愛』★★★☆☆
 幾何学的な部分があり、かなり切れ味鋭い分析の味も楽しめる。その後の作品すべての萌芽が見られると言ってもいい。

『アメリカ講義』★★★★☆
 難解でないが、整理が徹底していない。作家の立場からカルヴィーノ作品を読み解く上で必読。

◆これからやること
 ネオリアリズモ期の作品を読む。エッセイや遺稿や民話集を読む。再読の必要があるものは再読する。できたら未訳作品の英語からの重訳をする。