どうすんだろこれ

 あるとき降り立った複数の宇宙船。住宅区画は焼き払われ、統治機構は学校の設備を住宅に利用した。
 港湾労働者の男女。宇宙人の巣を見つけてしまったふたり。宇宙船を見にゆく恋人たち。「高校」を目指して旅を続けるふたり。

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【海岸までの距離:五キロメートル/インフラ残存度:60%】

 いつの間にか根付いてしまった、背が高くて変な形の外来植物たちは、浜からの風に揉まれて種子を散らしている。アレルギー持ちの亜子が心配になって、ふと後ろを振り返った。

「おい」
「何よ」
「症状、まだ出てないの」
「出てない」
「昨日は?」
「昨日も」

 粗い繊維で織られた、白くて薄い支給服を彼女は身につけている。平均気温は少しずつ下がっているけれどもまだまだ暑くて、強い風が肌に心地よかった。もっと洒落た服だって持ってるはずの亜子が、あの袋みたいな支給服を着たがるのも、きっと風を感じたいからなのだと思う。
 風向きが変わって、袋みたいな亜子の服が暴れる。

「どこ、いくの」
「海の方」
「なんかあったっけ」
「集合住宅」
「ああ、あそこ」

 夕暮れがはじまろうとしていて、空は淡く暖色に色づいた。地平線にはぽつぽつと建物の影が見えて、あとは草むらが続いている。ここから浜へと向かう道は細くて、舗装もなにもされていない。

「あ、車」

 日焼けをしていない亜子の腕が、道の向こうを指してすっとのびる。軽度の装甲に軽度の武装。港からやってくる統治機構の車は、走るときほとんど音をたてない。音をたてるというのはつまりエネルギーの無駄遣いで、だから無駄遣いしない技術を彼らは持っているのだとも聞く。

「また食べ物かな」
「だったらいいけど」
「わたし知らせてこようか」
「必要ないでしょ」

 居住棟の方へ向き直る亜子をそうして遮る。
 車は確かに居住棟の近くでは停まらない。少し離れた地点に停車して、居住棟の人達が出てくるのを待つ。誰かが気づくまで品物が受け取れないことも結構あって、そんなときどうにもやるせない気分になることも少しある。
 けれど、亜子に今帰られては困るのだ。

「そろそろさ」
「なに?」
「なにしに出たのか教えてくれてもいいでしょ」
「あー」
「あーじゃなくて」
「ええとね」

 噂自体は以前からあったのだ。細長いコンクリートの直方体。港までの旧居住区画にただ一棟だけ残ったそこに、見知らぬ人影が出入りしてるらしいという噂。
 居住棟のこどもの数は大して多くもなくて、だからそういう話はすぐに広まった。最初は散歩に出かけた誰かが、そして出かけることもない誰もが。

「それで見に行きたくなったわけ?」
「そう」
「男の子たち誘えばよかったのに」
「あいつらはOuter Spaceに夢中だろ」
「ああ、そうか」
「そうなんだよ」

 Outer Space。完全無料のオンラインゲームの名前。瞼の裏の静電ディスプレイで、目を閉じながらプレイする。長距離通信のための資源はなくても、むかし作られたソフトを走らせるくらいのことはできて、可能なことだけが実現していく。目を見開いて死んでゆく国土を受け入れるよりも、静電d