耳介のない芳一と彼の巡礼の年

ハルキムラカミを読んでいた時期にやれる気がして書きはじめた。無理だった。そして飽きた。
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耳介のない芳一と彼の巡礼の年
Earless Hohichi and his pilgrim years.

「とても困ったことになったんだ」
 友人からの電話が芳一の存在しない耳に飛び込んできたのはその年の暮れのことだった。とても寒い日で、窓の外では雪が債務のように降り積もっていた。芳一は友人の言葉を聞き取れずに顔をしかめた。
「きみはいったいだれだ? そもそも僕は、どうして電話を引いたりなんかしたんだ?」
 答えがかえる事はなかった。正確に言えば、友人は確かに返答したのだが、芳一がそれを聞くことはなかったということだ。かれが耳を持たないにもかかわず電話を引いているのにはわけがあって、それはガールフレンドを呼ぶためだった。
「食事にでも行かないかい、僕は行かなくてはいけないんだ」

 かれらは存在しない耳について話すのが好きだった。ガールフレンドの指が芳一の頭の側面をなぞり、輪郭を描いた。

飽きた